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「……そうか。けど、それよりも気掛かりにしてることがある。傷は大丈夫なのか?」
「……正直痛い。だが治しようもないんでな。今は我慢だ」
ヨシノは着ている真白のブレザーを脱ぎ、ブラウスを胸がぎりぎり見えない位置まで捲る。
上半身に走る傷の出血は完全に収まっているが、痛々しい跡は未だに残っていた。
だが、通常ならばあの傷がこんな短時間で塞ぐ訳もない。
「……大変だな」
「それほどでもないぞ。これは全治半年はかかるほどだ。貴方たち人間にとってはな」
乱れたブラウスを直し、ブレザーを着るヨシノ。
「"人間にとって"ってまるで自分が人間じゃないみたいな言い草だな」
「それを言わせたのは貴方だろう。それに、それはもう昨夜で分かっているはずだ。晋一郎は意外と意地悪なのだな」
「悪かったな」
何かを期待するかのような目で晋一郎はヨシノを見る。
観念したようにヨシノは息を吐き、大袈裟に両手を挙げる。
「全く好奇心と言うのは怖いな。分かった。恩人を黙殺するのは無礼だ。何を知りたい?」
「率直に言うぞ。あんたは一体何者だ。変な手品は使うし、ひょっとして魔法の国から来た魔法使いか」
「魔法使いか? "人間における二次的創作物"という箇所のみ正解だ。魔法使いならばあの出血でまず生きてはいないだろう。何せ肉体は人間のそれとほぼ変わらないのだからな」
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