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「じゃああんたは…」
「私は悪魔。正真正銘魔界から来た悪魔だ」
「悪魔か。そりゃ魔法使いとは訳が違う存在だわな」
「…さほど驚かないのだな。まさか信じていないのか?」
「ああ、まあな。けど半分はそれに近い答えを覚悟してたからあまり驚かずに済んだ」
「そうか。殊勝な心掛けだな。だが参ったな。証拠か。一体どうすれば信じてもらえるんだ? 角や尻尾でも生やせばいいのか?」
「そんなん出来んの?」
「ああ。だが見せたくはない」
きっぱりとヨシノが言う。
初めての頑とした意見だった。
「私のこの身体は言わば擬態。人間界で行動するためにこうして人の皮を被っているんだ。この姿をすることには二つの意味がある。まず一つ、魔力の消耗を抑えられる。魔力とは私たち悪魔にとって血肉と等しいほど必要な物質。魔力を用いることで晋一郎の言う"手品"を行使出来る。まあこの辺りの話は詳しく話せば長くなるから置いておこう。二つ目の理由だが、私的にはこれが最大の理由だな。それは悪魔にとって"真の姿"を晒すことが恥辱以外の何者でもないからだ。おまけに理性も働かない、魔力もオートで消費するなど悪いことだらけだ。その分力は増し、とてつもない強さを得るが所詮それは理性というリミッターを外したから出来る芸当。そんな強さを見せつけたところで誰も認めはしない。人間で言うところの酔った状態とでも表現しておこうか。未成年の晋一郎には難しい表現だったな」
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