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多少小馬鹿にされたことを気にしつつ、晋一郎は頭の中で話を整理する。
「つまり、悪魔に"真の姿"を晒せって言うのは『裸になれ』みたいなもんなのか?」
「うん? まぁそうだな。ちなみに魔界でそれを言うとセクハラで捕まる」
「……マジ?」
「ああ」
嫌な世界だった。
「そっか。じゃあ強要は出来ないな。そんじゃ"魔力"はどうだ? それなら大丈夫だろ?だろ?」
晋一郎の目は輝いていた。
まるで珍獣でも見るかのような視線をヨシノに送っている。
「それくらいなら大丈夫だが…晋一郎よ、私を好奇なまなざしで見ていないか?」
自分が見せ物みたいで気に食わない。
恐らくヨシノは遠回しでそう言っているのに晋一郎は気付く。
「あ、いや…その」
あからさまな言葉の詰まり。
あまりにも分かりやすい表現だった。
「………ふっ。冗談だ。晋一郎の好奇心が強いことは把握している。さて、魔術だったな。何をしたものか」
あれこれ考えるヨシノは、何やら閃いたのかポンと手を打った。
「ああそうだ。余談だがこの部屋の再構築も魔術を応用したんだよ」
「この部屋? 再構築?」
意味が分からないのか、晋一郎は首を捻る。
「この部屋は血まみれの地獄絵図だったからな。いっそのこと初めから創り直した。それを可能にするのが魔術なんだ。と、その前に色々説明せねばな」
キョロキョロと部屋を探し回るヨシノは、何故か醤油差しを見てにやりと笑う。
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