若菜 晋一郎

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「毎度のことながら人の目を気にするよな、これは」 そして、茂みに入る。 鬱蒼とした林に光は届かず、真っ暗な空間が晋一郎の眼前に広がった。 「ま、これは想定内だな」 カバンから取り出すのは懐中電灯。 光の筋を頼りに、パキパキと枝を踏み鳴らして晋一郎は前進する。 このようなことは別に初めてではなかった。 むしろ何度も経験している。 晋一郎の住まうアパートはこの公園を超えた先にある。 上空から見れば円形に造られたそれは、住宅街の中に埋め込まれたように存在するので、晋一郎が帰宅するにはぐるりと公園を半周しなければならない。 だから、こうして帰りが遅い日は公園を突っ切るという荒技に出ているのだ。 「やれやれ。たまには手入れでもしろよな。税金ドロボーめ」 などと愚痴をこぼしながら、密林のように茂る草や蔦を掻き分けて、晋一郎はどんどんと先へ進む。 眼前こそ障害が多いものの、足下は長年歩いて来たためか獣道になっているので迷うことはまずない。 だから、特に足下には気を配っておらず、晋一郎は目の前だけに光を灯して歩いている。 「あだっ!!」 つまり、足下は疎かになっているのだ。 晋一郎は何かに躓いてしまった。 「びっくりした……一体何だってんだよ」 晋一郎はおもむろに足下を照らす。 そこにあったのは蒼白く光る杖だった。 まるで水晶のように、透き通った鮮やかな代物だ。 杖の先端には、雪の結晶をモチーフにでもしたような飾りが施されている。
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