若菜 晋一郎

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「と、とりあえず止血をしないと…」 だが、医術に関して無知である晋一郎にとって、この場合の適当な措置が分からない。 考え付いたことと言えば、バイトで使うエプロンで患部を覆うくらいなもの。 完全にとは言えないが、ひとまず大量出血は抑えることが出来た。 「次は…」 救急車を呼ぶ。 それが定石なのだが、生憎晋一郎は携帯電話という文明の利器を持ち合わせてはいなかった。 晋一郎は思考する。 近くの民家に助けを呼ぶ? 公衆電話? 置き去り? 様々な案が思い浮かぶが、どれも最善とは言えない。 しかも、晋一郎には一つ危惧している事態があった。 それはこの惨状をどうやって説明するか。 例え、助けを呼んで少女の救出に成功したとしても、次に問われるのは少女がこうなってしまった経緯だろう。 鋭い刃物でやられたであろう傷は間違いなく人為的なもの。 しかも現場は人通りのない茂み。 疑り深い警察なら晋一郎が容疑者に挙がることは必至だ。 無実を訴えたところで、それがすんなりと受け入れられる保証はない。 「くそっ!!」 晋一郎は葛藤する。 少女の命か、自分の無実か。 そして、その選択に時間は設けられてはいない。 「がはっ!!!」 突然、少女が吐血する。 あれ程の傷だ。 臓器の幾つかはやられているに違いない。 考える時間が長いほど少女の命は蝕まれていく。
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