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「ふん。見たところ貴様は単騎で挑んでいるようだな。私もなめられたものだ。だが私は手加減などしない。"敵"は全て"排除"だ」
少女は振り上げた右手を傷口に埋め込む。
「ッ!?」
血を掻き回す生々しい音が気分を悪くさせる。
引き抜いた手は真紅に染まり、余った血が床に滴る。
傷口からは更に血が噴き出る。
「"氷血"」
少女が唱えると、突如として傷口の血が固まる。
まるでかさぶたのように、紅い膜が傷口を覆い、一切の出血を遮断した。
「"氷血―朱爪―"」
晋一郎に驚いている暇はない。
今度は少女の手に付着した血が刃物のように鋭く尖り、固まる。
「行くぞ"敵"」
晋一郎に向けて、右手で薙ぐ。
助走はいらない。
狭い部屋故に手を動かすだけで、獲物に得物が届く。
「うお!!」
直線的な動きが幸を奏したか、晋一郎はしゃがんで刃を避ける。
極力少女から間合いを取って叫ぶ。
「お、落ち着けって。俺は敵じゃないし、第一お前その手、危ないじゃないか。当たったらどうすんだよ」
「危ないだって? はん。おかしな奴だな。殺すための攻撃なのだから、危ないのは当たり前だろう!!」
「うあ!!」
眼前に向かって来る刃を横っ飛びで避ける。
棚にしまってある本類が何冊か落ちるが、いちいちそんなの気にしてられない。
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