BOX1:ユキノ

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  「それでは」       ――ぽん。     あたしの手に、あの出刃包丁を渡す。 ……うん。何をすればいいのか……何と無く、分かる。       「……お母さん、雅人お兄ちゃん……」     柄を持って、刃をこちらへ向け……ゆっくりと喉の穴にあてた。 刃先が欠けてるから、上手い具合にははまらないけど……うん、大丈夫。       「今いくから。今度こそ、今度こそ」         あたしは思いっきり、包丁を喉へと突き刺した。     ――痛みは、なかった。         死んでるんだもん、ね。       それでもあたしの意識は遠ざかり、スローモーションで身体が倒れていくのを感じた。         あ。             ――真っ赤な、天井――                                 「お休みなさい、雪乃さん。   願わくば貴女に……終わらない、穏やかな赤い夢を……」  
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