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「それでは」
――ぽん。
あたしの手に、あの出刃包丁を渡す。
……うん。何をすればいいのか……何と無く、分かる。
「……お母さん、雅人お兄ちゃん……」
柄を持って、刃をこちらへ向け……ゆっくりと喉の穴にあてた。
刃先が欠けてるから、上手い具合にははまらないけど……うん、大丈夫。
「今いくから。今度こそ、今度こそ」
あたしは思いっきり、包丁を喉へと突き刺した。
――痛みは、なかった。
死んでるんだもん、ね。
それでもあたしの意識は遠ざかり、スローモーションで身体が倒れていくのを感じた。
あ。
――真っ赤な、天井――
「お休みなさい、雪乃さん。
願わくば貴女に……終わらない、穏やかな赤い夢を……」
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