139人が本棚に入れています
本棚に追加
オレは、シンガーだ。
つっても、ペーペーの新人。誰も知らないって言ってもいいくらいの無名シンガー。
歌が歌いたい。
ただそれだけで家を飛び出し、運よくデビュー出来た。
ただ、そうトントン拍子に上手くいく程世の中は甘くない訳で。
「エイジ、仕事だ」
「……」
来る仕事は深夜番組ばっかりだ。
しかも歌とは全然関係ない。
――苛々する。
そういえば、最近全然笑ってない気がする。
マネージャーから受け取った仕事概要の書類に目を通し、オレはうんざりしてしまった。
「……土屋さん。これ……」
「……やりたくないのは分かるけど、下積みがなきゃ目に止めて貰えないんだぞ?」
正論だ。
オレはソファーに顔をうずめて、大きく溜息をついた。
――何がシンガーだよ。
社長が、オレの顔立ちを気に入ったからって……AV紛いのバラエティーに出る為に、家を出たんじゃ無いっ……!
最初のコメントを投稿しよう!