BOX2:エイジ

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  「わかってる、わかってるけど……」     オレは歌いたいんだ。     「……本当はこの仕事が終わってから言おうと思ってたんだけど」   「え。何すか」     土屋さんが出したのは……さっきの書類とは別の紙。   それと一緒にあるのは……CD、と……オレのノート?     「これ……」   「この前エイジが作った曲が気に入られてな。プロモ撮らないかって話が来たんだ」       ――ガタンッ!     安いパイプ椅子が後ろに弾け飛んだ。     「ちょっ、お前っ……」   「マジ!?マジっすか土屋さんッ!」     ものすげぇ興奮して、土屋さんの肩を掴んでガクガク揺さ振った。   だってこの前作ったばっかの曲だぜ!?もう聴いてくれた人がいて、しかも気に入ってくれて!           プロモだぜ!?       「落ち着けっ、て……エイジっ」   「あ、すんません」     あんまり揺さ振ってたもんだから、土屋さんの眼鏡はズレて、顔色は悪くなっていた。 やべ、やり過ぎた?     「いいか?その前の仕事もちゃんとやれよ?」   「あったり前だろ!」     初めて、と言ってもいい"音楽"の仕事。 それをフイになんかする訳ねぇ!                     ……撮影する前日の夜……。 遠足前の小学生の如く全く眠れなかったのは、内緒の話だ。  
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