香りと共に

1/1
前へ
/5ページ
次へ

香りと共に

金木犀が欲しい と、急に走って行った 財布は持ったのだろうか 嗚呼、あの子のことだ…忘れているに違いない ぱたぱたと近付く足音 息を切らせて 髪を振り乱し そんなに急がなくとも金木犀は逃げないよ さぁ落ち着いて行って来なさい それでも走って行くのか 可愛らしいことだ 暫くして 今度は静かに からからと戸を開け ただいま とあの子の声 嗚呼、金木犀があったんだね 君の姿共に香りも来たよ おかえり と言えばあの子は にこりと笑って 金木犀、あったよ 嗚呼、香りに負けない可憐で甘い笑顔 愛しい、愛しい、 私の可愛い子 さぁ、金木犀を床の間にでも生けようか
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加