追い風

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「真央、まだ開けてない段ボールがあっただろ? 早く整理しなさい」 リビングの机の上に大きな紙を広げてぶつぶつと言っていたお父さんに言われる。 「わかった」 ちらりと紙を見ると地図があった。 「何してるの?」 「いや…もうすぐクリスマスだろう?クリスマスツリーを今製作中なんだがどこの広場に設置しようか迷っていてな……」 そう答えるとまた紙にペンで印を付けぶつぶつ言い出した。 あと4ヶ月でクリスマスだった。 アメリカで初めての クリスマス 「クリスマスは一緒にケーキでも食べよう」 お父さんがにっこり笑った。 「うん」 そう言って微笑んだ。 ビリッ ビリッ 白い段ボールを開ける。中は全て小物や光さん達からの餞別だった。 なんとなく、今まで開けたくなかった。 開けた瞬間日本に帰りたくなる自分を 恐れた。 「CD入ってる………」 杏奈さんからだった。 <CDに入ってる1番がletter、2番がto you。 気が向いたらきいてね~♪> プレイヤーがこの家には無い。 買ってきて貰おう カレンダーの12月24日に赤で"X'mas"と書き込む。 アメリカに来て1ヶ月。 「……そっか……」 今 初めてアメリカに来たという事を感じた。 現実味が無かったんだ 今までの私は お父さんが生きている事にも 自分がアメリカに居る事も でも これが私の今なら 「歌詞カード破れてるし……」 進むしか ない アキが居ない事も なんとなくしか感じていなかった 肌でアキが居ないという事を 感じていなかった パキンッ CDケースにひびが入る。 まだ キスされた時の感覚が 残ってるんだよ 消えるのは どれくらいの時が過ぎたらなのかな そう問い詰めて 答えが出なくて 気付けば隣にアキが居て 教えてくれたのに 「アキ…」 忘れたい 忘れたくない 受け止める 悲しい 自分勝手な矛盾の中で あとどれくらい泣けばいい?
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