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「お父さん、着いたよ」 寝ていたお父さんを起こす。 アメリカに、着いた。 街並みを見た感想は、人が多い。 あと、当然だけど日本語が聞こえない。 英語しか聞こえない。 不安になった…… 「すぐ慣れる」 そんな私の心境を見計らってか、お父さんが言った。 慣れる…か… アメリカでの生活に慣れた自分が想像出来なかった。 「このビルの最上階が住む所だ」 空へ伸びるビル。 ここの最上階全てが私の住む場所なんだ…… 「父さんはいまだにトイレが広すぎて慣れないよ」 「すぐ慣れるっていったくせに……」 笑いながらお父さんとビルの中に入る。 中では沢山の人が急がしそうに働いていた。 口論をしている人も居る。 2人の金髪の女性がお父さんに頭を下げた。 お父さんが通り過ぎる度に皆頭を下げる。 「……偉くなっちゃって」 「はは…へこへこされるのが未だに気持ち悪いよ。いつか飛び掛かってこられそうで」 「そんな訳ないでしょ」 最上階は48階。 エレベーターの扉が開くと数メートルの空間が有り、扉が有る。 その扉の両脇に黒いスーツを身にまとったいかにも強そうなガードマンが4人居た。 お父さんはその人達に何か言い、カードを機械に通した。ピピッという音と同時に左右に扉が開いた。 中は確かに広かった。 というか、凄く凄く広かった。 1つ1つの部屋をお父さんが案内する。 トイレは私が住んでいたマンションの寝室の倍はあった。 「ここが、真央の部屋だ。 スペアキーも渡しておく。落とさないようにな」 チャリ… 音を立てて手の平に2つの鍵がのせられる。 「今日はこのビルの中でゆっくりしなさい。この後会議があるからすぐ行ってくる。 ビルの中に父さんは居るから困ったらいつでも携帯で電話をかけたらいい」 そう言ってお父さんは部屋から出て行った。 ベッドも大きい。 ここは、アメリカだ。 日本じゃない アキは 居ないんだ 私は窓の外を見る。 下を見ると車が米粒なんかよりずっと小さかった。 交差する人の群れ 人の数だけ想いも交差する どんな想いが どんな心の叫びが 交差してるの? 「暑……」 私は頭をひっこめる。 エアコンのきいた部屋が肌寒くて温度を上げた。
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