変化

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「49、50、51…」 3月1日、午前10時。 私は今店の奥の倉庫にいる。 イリーとクリフの働いている、店。 「52番レース持ってきたよ」 私は去年の秋からこの店で働くことを決めた。 理由は単純に、楽しそうだったから。 「ありがとう」 お腹の大きくなったイリーはにっこり笑った。 「優しい顔をしてると女の子が生まれてくるの。女の子が欲しいわ」 元気に生まれてくれればどちらでもいいんだけど、と付け足しイリーはレースを受け取る。 「いつ生まれる予定なの?」 「7月上旬よ。暑いから大変!」 霧架の赤ちゃんもきっともうすぐ生まれるだろうな…… つい最近、霧架の居場所が分かった。 お父さんが地道に探していてくれたから。 霧架のお腹はイリーよりも大きくて 表情は沈んでいた。 "浮気されたんだ……" そう言って苦笑いを浮かべた霧架を私は泣いて抱きしめた。 "離婚しようって言ったら必死に謝られて浮気相手の女とはすぐ別れてくれた。 これから先また浮気されるかもしれないのに、離婚出来ないの。 浮気されても、嫌いになれないの。傍に居たい。 不器用なあの人がどうしても、好きなんだよね" 自分のお腹を撫でながら悲しそうに霧架は言った。 妻が妊娠中に浮気をする男。 最低だと思った。 でも霧架は嫌いになれないと、言った。 傍に、居たいと…言った。 その言葉を聞いた私の心臓は、大きく脈打った。 どうしても好き そんな感情は 私にもあったのに 「真央、本当に上手くなったね!凄く助かるわ」 「上手くなんかないよ…楽しいけど……ッ…痛……っ」 「真央!大丈夫!?」 最近 お腹が痛い。 生理痛のようで少し違う。 鉄の重りがお腹の中にあって、それが痛くなるような感覚。 お腹の張りは太ったからだと思っていたのに体重は変わらない。 それでも下腹は張る一方の私の体。 「真央、やっぱり病院に行った方がいいわ。最近ずっとなんでしょう? 胃腸炎にでもなってたら大変じゃない」 クリフが私とイリーの居るテーブルに近付いてきた。 「真央、病院に行ってきた方がいい。 顔色も悪いし…一緒に行こう」 私は頷き、クリフと店を出た。
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