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「真央、この薬は何だ?」
朝、起きてリビングでパンを食べていた私にお父さんが問う。
私は腹痛の事と医師の言った事を話した。
「違う病院にも行きなさい。色んな所で見てもらった方がいい。今から一緒に行こう」
イリーと同じ事を言うお父さんに私は頷いた。
皆がそう言うのだからそうした方がいいんだろう。
着いたのは昨日クリフに連れていって貰ったところよりももっと大きい病院だった。
「ここらで多分1番大きい病院だと思う。色んな検査をして貰えるはずだ。
時間はかかるだろうが見てもらおう」
中に入る。
子供から高齢者まで沢山の人が居る。
嬉しそうな人、泣いてる人、そわそわしてる人、それぞれだった。
「病気だったら…どうしよう…」
そんな事を呟くとお父さんが大丈夫だ、と言った。
少しだけ不安な胸を抱え、受け付けに向かう。
「クリフ、今日真央は店に来ないの?」
「さっき連絡があった。今日は休むそうだ。」
「どうして?」
「念のため昨日と違う病院でもう1度見てもらうそうだ。」
イリーはため息をついた。
「真央、大丈夫かしら…」
「大丈夫さ」
クリフはイリーの頭を撫でた。
きっと大丈夫。
誰もがそう思っていたのに
「今、なん…て……?」
声が上ずったのはきっと気のせいなんかじゃない。
「……」
お父さんは暗い面持ちで床を見つめた。
言いにくそうに口をつむっていた。
「………っお父さん!」
沈黙にどうしても耐え切れず、私はお父さんに再度、言った。
「何て…言ったの?」
「真央……」
右手を強く握る。
早く
早く言って
聞き間違いだと
「ovarian cancer………」
いつか聞いたこの言葉を
「卵巣がん……だ……」
こんな形で聞く事になるなんて
思いもしなかった
「入院………しなくちゃね………」
「そうだな…
真央、がんと聞くと死んでしまうような大病に聞こえるがきちんと治療すれば必ず治る。
大丈夫だ。」
必ず
治る。
その言葉を胸に、私の闘病生活が始まった。
頭に浮かんだのは誰?
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