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夢を見た。
俺が小さかった時の記憶だった。
『お母さん!僕、これやりたいっ!!』
『あら、ダメよ。金魚すくいなんて。ちゃんとお世話出来ないでしょ?』
『ちゃんとするもんっ!!お母さんお願い!』
そうだ。
俺はどうしても金魚すくいをやりたくて、出店の前で駄々こねてたな。
今となっちゃあり得ない話だけど。
しゃがみこんだ俺に母さんは困った様子でこう言った。
『ならお母さんと約束して。もし一匹でも捕まえれたらちゃんと世話をする事。良い?』
『うんっ!!』
そして、金魚すくいをやった。
俺はどれにしようか迷って、他の金魚とは違う様に見えて、ひらひらした金魚を追い掛けた。
でも案の定ポイは破れた。
破れたポイを見ながら涙ぐむ俺を見た金魚すくいのお兄さんが、
『お兄ちゃんはどの子が気に入ったんだ?』
と聞いてきたから俺は迷わず追い掛けた金魚を指差した。
そしたらお兄さんは、よし、と言ってその金魚を掬ってくれた。
それが凄く嬉しくて、俺は満面の笑みでお兄さんにありがとうと言って、その日に母さんと金魚鉢を買ってもらい帰った。
金魚鉢と酸素ボンベと、そして色とりどりのビー玉を買って。
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