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(はぁ。今日からまた学校かぁ。ダルっ。勉強も簡単でつまんないし。)
彼女は一番窓際の、一番後ろの自分の席から、机に肘を立てて、夏から秋に移り変わる外の景色をぼぉっと眺めていた。
「はーい、席つけぇ。新学期初日からグダグダすんじゃないぞぉ。頭切り替えろぉ。今日はみんなに紹介したい人もいるからな。」
教室が一瞬ざわついた。
「おーい、入っていいぞ!!」
ガラガラガラ……
制服の違う、ひとりの男の子が教室へ入ってきた。
「失礼します」
「彼は今日付けでこの学校に転校してきた。さ、こっちへ来て、自己紹介してくれ。」
「八田響(はったひびき)です。神奈川から来ました。東京には何度も来ているけど、住むにはまだ慣れてないんで、分からないことがあった時はどうぞよろしく。」
彼は、大勢の知らない人間の前でも、余裕のある面もちで挨拶をした。
「質問がある奴は、休み時間になってからな。じゃあ八田、当分の間はとりあえず、古都島の隣で授業うけてくれ。」
(えっ!?ここくんの!?私の1人の空間がなくなるじゃん…)
八田は担任に指示を受け、古都島の隣の席に座った。
八田は俗に言う、イケメンというやつだ。
クラスの女子は、女子同士でカッコイイだのなんだのって、小さく黄色い声をあげていた。
その頃彼女は、1時間目のテキストを開き、目を通していた。
八田が彼女の隣の席につく。
「はじめまして。君の名前は?」
八田が彼女に声を掛けてきた。
「あ、はじめまして。古都島麗(ことじまれい)です。」
「麗ちゃんか。可愛いぃ名前だね。これからよろしくね。」
彼は彼女に微笑みかけた。
麗も微笑み返しはしたが、こんな私に笑いかけるなんて、どうせ女には八方美人なチャラ男なんでしょ、と思った。
響に興味を見せることもなく、彼女はまたテキストに目をやった。
響はそんな彼女を探るように一時、麗を見つめていた。
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