新学期

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授業が終わる度、麗の隣の席は生徒でいっぱいになった。 6組の生徒だけでなく、他の教室からも生徒は興味深々に集まってきていた。 もちろん麗は屋上。 と言いたいところだが、10分間しかない休み時間の度に毎回屋上に行くのはさすがに面倒だ。 ではどこにいるかと言うと、自分の椅子と読みかけの小説を持ち出し、1人ベランダに。 この学校のベランダは、隣のクラスとは繋がっていないため、ベランダを廊下代わりにする生徒もいないし、クラスのほとんどが八田のもとにいるならば、ベランダに出てくる生徒なんて、ほぼいない。 八田が注目を浴びている今だけは、屋上の次に安らげる場所だ。 もうすぐ帰りのホームルームを迎えるその頃、八田は質問責めに合っていた。 「響くんって呼んでいい?」 「お前どこ住んでんの?」 「あの有名な私立校だったんでしょ?勉強教えてよ。」 頭の悪くない八田も、 さすがに答えきれない。 八田はふと、また麗のことが気になった。 隣にはいないし… 「ベランダ?」 人混みの隙間から窓を見ると、麗の後頭部が見えた。 八田はごめん、と一言いって、ベランダに顔を出した。 そこには、 右耳の後ろひとつにまとめた髪が胸まで垂れ、 結び目まで届かない、少し長めの前髪と、 メガネをかけ、文字をたどる目線。 ブレザーを脱ぎ、体を包む柔らかいセーターと、 膝が見えるだけの、短すぎないスカート。 そして… 足はベランダの柵の上。 「えぇっ!?」 麗が八田をみた。 「八田くんか。何驚いた様な声出してるの。みんながうしろで待ってる。」 何驚いた様な声出してるのって、そりゃ、イメージとか想像と違いすぎる、と八田は心の中で思った。 「意外に大胆なんだ…。」 八田は小さく独り言を言った。 すると、後ろからポンと肩を叩かれた。 「八田、気にすんな。あいつ、いつもあぁやって独りでいるんだ。可愛くもねぇ。」 「そぉそぉ。静かにしてるくせに、態度だけはいつもデカいの。」 「あんなのと一緒にいたら、お前までカビ臭くなるぜ!!」 そう言って、クラスの奴は笑った。 「ほらぁ、帰りのホームルームはじめるぞぉ。当番、はい、日誌。席つけぇ。」 先生が入ってくると同時に、さっきまで八田のもとへうるさく集まっていた生徒が、一斉に散らばっていった。 麗もまた、椅子を持って、自分の席へ戻ってきた。
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