プロローグ

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「お疲れ様でした!」 などと言って、むかつく店長のいる、看板に酒のスーパーって書いてあったりする酒屋を後にした。 俺の名前は崎原進。 器用貧乏な寂しいアルバイターだ。 「全く、気に入らねえ」 毎日酒ばっか飲みやがって……。 「鮭は酒に合うって……全然面白くないんだよ」 こんなことでクビにされるのは嫌だから言わないが、俺はそれなりに短気だ。 はっきり言ってあの禿頭じじいは一度ぶん殴ってやりたいと思う。 「取り敢えず、晩飯の材料でも調達しに行きますか……ん?」 あ、何か踏んだ。 歩きながら煙草を咥えて火を付けようとした矢先に堅い金属的な物を踏み付けた。 そっと足をどけると、何らや光る物があることに気付く。 「なんだこれ? 指輪……か?」 それは炎みたいに赤い色の、それ自体が宝石なんじゃないかと思ってしまう程に綺麗で、幻想的な指輪だった。 「貰って良いのか? ……いやいや駄目だ!!」 人様の物を、たとえ落し物じゃなかったとしても、こんな物を勝手に持ち去って良い筈なかろうが。 「どうするべきか……」 「あぁ! その指輪返して!!」 「ぐぇ!?」 く、苦しい。 首が絞まる……。 「返して返して返してぇ!!」 な、何なんだ一体。 首を締め付けられているのは分かるけど、なんで俺が……それに指輪って……。 「がっ、分かっ……たから、放してくれ……!」 このままじゃ窒息死しちまう。 「本当!?」 「……あぁ。 だから、放して……くれ」 もう駄目だ……。 そんなふうにことを考え始めたら、いきなり手を放された。 「ごほっ、がはっ……! な、何だったんだ……!?」 むせ返る俺はぼやけた視界の中に小さな女の子を見付ける。 「はい!」 その女の子は俺に向かって、手を差し延べてくれた。 「あ、あぁ。 ありがとう……」 状況が分からない俺は、彼女の手を取る。 「違う」
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