プロローグ

3/4
前へ
/4ページ
次へ
小さく低い呟きが、鼓膜を打つ。 だが次の瞬間、突然の浮遊感と共に俺の身体は宙を舞っていた。 綺麗なまでの放物線を描いて飛んでいると思われるが、そんなことはどうでも良い。 問題は、このままだと恐らく俺は死ぬだろうと思われるこの状況だ。 (嘘だろ……!?) 今日の出来事から始まって、ビデオの巻き戻し映像でも見てるように記憶が流れて来る。 走馬灯のようにってのもあながち嘘じゃないみたいだ。 「あは……は、マジかよ……」 こんなわけの分からない状況で死ぬなんて、大して良い一生とは言えなかったな。 目の前に迫った地面に恐怖なんて感じない。 死ぬ間際に冷静になれるタイプみたいだ。 そんなことが分かっても、今更どうこうとなることも無く……もう考えるのも面倒臭い。 そろそろこのスローな時間が終って欲しいと思う。 そして俺は意識を…… 意識を………… 「……ん……?」 あれ、浮遊感が無くなった。 それにこの感触……。 「おい、生きているか?」 いつの間にか閉じていた目を開けると、俺は同年代くらいの女の子に抱えられていた。 「君は……?」 ……って、そんなこと言ってる場合じゃない。 めちゃくちゃ恥ずかしいぞこれ。 「女の子に抱えられる男って……」 「うるさいぞ一般人」 今の言葉はなんかむかついた。 「ヤヨイ! 何をしに来たの!!」 「マルスを消し去ろうなどと考えている奴に名を呼ばれるのは些か不愉快だな。 決まっているだろう?」 さっきの女の子か……。 すっかり忘れてたな。 「うわっ!?」 いきなり地面に落とされる情けない俺。 「お前を殺す為だ。 Ⅴナンバー」 「殺す……!?」 今確かに彼女はあの子にそう言った。 もし本当なら止めなきゃならない。 「……どういうつもりだ?」 俺は彼女の前に立っていた。 「人殺しなんて止めるんだ」 年端も行かない女の子を殺すなんて、そんな事はさせちゃ行けない。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加