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そんな事はしたら駄目なんだ。
「どんな理由があっても人殺しは――」
「殺される側の人間がほざくな」
「……っ!?」
今の感じ、まるで心臓を鋭利な刃物で突き刺されたような、そんな感覚が襲う。
寒気なんかが一気に集まったこの感じは、冷たい……そう、身を凍り付かせる洗練された気。
「早く失せろ、一般人」
身動きの出来ないでいる俺の傍らを彼女が通り過ぎる間際。
「きついこと言ってごめんなさい。
だけど、早く逃げて」
「え……!?」
俺に話し掛けた彼女の声は先程までとは別物で――。
「ちょっと待ってくれ!
君は……!?」
振り返る俺は彼女に惹かれて――。
「……いない……」
月明りを浴びて薄く光る夜の桜が妙に綺麗だった。
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