黄昏時の家路🏠

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「いったい  どうなっているんだ…。  何があったんだ?  …そなた、側に  おっただろう?」 その前日、同じ場所で サラも話を聞かれていた。 「申し訳ございません…。  私にも、はっきりとした  ことは…。ここ一月ほど、  何か思い悩んでいらっしゃる  ご様子でしたので、色々と  お尋ねしたのですが、答えては  いただけませんでした。  …お嬢様の信頼を  得られなかったことは、  私の失態です。  申し訳ございません…」 「…そんなことはいい。  それより、あれは  アニバールの流儀が  気にいらんようなことを  匂わせておったが…。  どう思う?」 「私は…可能性は  低いと思います。たしかに  文化が違いますので、  はじめは戸惑って  いらっしゃいましたが、  じきに慣れられました。  …あちらの奥様も決して  厳格な方ではございませんし、  お嬢様もそう不自由を  感じていたとは思えません」 「では、誰かに  いじめられでもしたのか?」 「まさかっ。…もちろん私は、  高貴な方々のサロンに  出入りできるような立場では  ございませんので、  はっきりしたことは  申せませんが…。お嬢様は  こちらでと同じように  皆様から歓迎されて  いらしたはずです。  …それに、無礼を  承知で申し上げれば、  あのお嬢様がそのようなことを  気になさるとは…。  後悔なさるのは、  相手の方でしょう。  ですので、むしろ…」 「なんだ?」 「原因は、ロードカム伯爵様では  ないでしょうか。…伯爵様は、  なんと申しますか、お嬢様を  お避けになっていらっしゃった  ように見受けられました。  お嬢様はそのことを  気にされて…、悩んで  いらっしゃったのだと  思います。…あちらを発つ  何日か前からそれが  一層深まったようで…。  一目でわかるような変化では  ありませんでしたが、  かなり落ち込んで  おられたように思います。  …おそらくその前に  お二人の間でなにかが…」 「…そうか」
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