プロローグ

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今流れている曲は、ベートーヴェンの交響曲第五番「運命」。 ダンスをする曲にはまったく相応しくない。 しかも、今日は私の十六の誕生日会だ。 もうちょっと華やかな曲にしろ、と周りには言われたが、気にしない。 お母様が死んだとき、お父様が送った曲がこの曲。 お父様が死んだときに私が送った曲がこの曲。 そしてまた、この男の死に私が送る曲。 十六の誕生日、とかそういうのは関係ない。 私はただ、十六年間意味もなく生きていた、という象徴だけ。 毎年一回、こうやって好きでもない奴と踊って、いらない宝石とかを貰う。 本当に飽きた。 だから、今日は彼に「運命」を送ろう。
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