PROST

reason

「ねぇお兄ちゃん、この人彼女？？」

「タカ、ご飯食べてこい」

「はーい」

弟は不満そうに、何回も岡村ナギサの方を振り返り、最後に手を振って隠れた。

外に出るともう秋の風が吹いていた。

「なんの用？やっぱり彼氏紹介したほうがいい？」

「違うわよ！アンタが公園に定期入れ忘れていったから届けに来たのよ！」

「あ、ホント。
…ありがとう」

定期入れを受けとり帰ろうとすると岡村ナギサが話かけてきた。

「…さっきの」

「え？」

「さっきの弟さんの、いつも言わせてるの？」

「…まぁ、アパートだからセールスが来るからね」

「お父さんやお母さんは何も言わないの？」

「3年前からいない」

「え…？」
思わず岡村ナギサが自分の口元に手をやった、たぶん驚いた時のクセなんだろう。

「交通事故でね、だからオレが今は親代わりなんだ、援交してでも金がいる理由てやつ」

「…で、でも施設に入ったり…里親になってくれる人とかいるんじゃないの？」

「どんだけ金持ちの里親だよ、ウチ5人兄弟だよ、それに施設も5人同時に受け入れなんて出来ない、兄弟が離れて暮らすことになるんだよ」

「で、でもだからって犯罪をしていいってことにはならないわ。」

「じゃあどうしろって言うんだよ！！
新聞配達やコンビニのバイトで5人も生活出来んのかよ！？」

「…わかんない…」

-初めて岡村ナギサが泣きそうな顔をした-