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[一話]
修介「……美味いな!」
涼「…そう?」
涼はベタつきが残る木製のテーブルに肘を付こうとしたが、その手を膝に持っていく。
涼「…………。」
修介「嫌。…だったか?」
涼「…そうじゃない。」
修介は揚げ餃子を口に放り込み、涼は海苔団子の一粒をかじる。
昼間の強い陽射しによって気温が高くなる店内で、涼は緊張していた。
何故なら、涼は同い年の男女二人だけで出掛ける事が無い。経験がゼロである。
況してやクラスメイト。その上昼食。これじゃまるで…。
涼「…………でぇと?」
修介「な!? …な、何をいきなりッ!!」
涼「………違うの…かな…?」
少しだけ顔を赤らめた涼に見惚れ、修介は逃れる様に顔を反らす。
涼「団子…美味しいねぇ。」
修介「……ぁ、…あぁ。美味いな。」
涼「笹木君それ……?」
修介「え?…何??」
涼「……何?じゃなくて、笹木君がかじってるそれって…。」
修介「……………味無っ!!」
ダイフキをチマチマとカジっていた修介を、唖然として遠い目で見つめる涼。
店長「行らっしゃーい…ネ!」
会話も少ないまま食事を終えた二人が次の予定を話していると、不意に店長のイ・ウォン氏登場。
修介「韓国名じゃん!?!?」
涼「へ?」
店長「なんだネ? いきなり。…営業妨害アルか?」
思わず描写に突っ込みを入れてしまった修介は、慌てた様子で熱を抑える。
それを見たウォン氏は笑顔で、持っていたお盆から、小さな容器に入れられた赤い胡麻団子を二つテーブルに置く。
店長「コレ新作。…試食やから食べても構わへんわ。」
修介「ど…ども……?」
涼「口調…が。」
店長「ぁ……。ゴホン! …………じゃ、ごゆっくりネッ!」
日本の方言を発したエセ店長はその場から立ち去り、近隣のテーブルにも赤胡麻団子を配っている。
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