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グローリー王国の最北端に位置する軍事都市、『アルバース』…
この巨大な街の郊外の小さな家の小さな窓に東から登ってきた日の光が当たる。
その小さな部屋のベッドで寝ていた黒髪の青年は朝の到来を朝日によって知り、トロンとした目を擦りながら目を覚ました。
「…ふわぁ~、朝か…」
少し伸びをすると、壁に立て掛けられている剣を手にとって寝ぼけた表情で螺旋状の階段を一歩一歩、登っていった。
2階に上がってさらに屋根の上へと続く梯子を少年は慣れたようすで登っていく。
「ヤバい、今日は眠いな…ふわぁ」
小さな家の屋上は平坦な地形になとており、目立ったものといえば、木で出来た人形くらいしか無かった。
「まぁ毎日の習慣だしなぁ……目覚まし変わりに今日もやりますかね」
そう自分に言い聞かせるように呟くと、先ほどまで寝ぼけていた様子が嘘のように、全身に何か覇気を纏ったような、そんな引き締まった表情になった。
そしてその眼光を木製の人形に向け、銀色の光を放つ、鋭利な剣を腰から抜き、正面に構えた。
「はぁッ!!」
少年は剣を振り、人形に斬撃を与えた。
更に少年はその動きを流れるような動作で右、左…と繰り返し、何度も人形を斬りつける。
「ふんッ!!」
少年が、少し力を入れて剣を横に振り抜くと、鮮やかに人形が頭と胴体部分で真っ二つになった。
「あぁー!!……またやっちまった…!!」
無惨に切り裂かれた人形の胴体部分を眺めながら、少年は少し頭を項垂れている。
「あぁ、練習用人形、また斬っちまったよ…力を入れるとすぐこれだ…。
今度、アルミ製買おうかな…でも高いんだよなぁ、あれ…」
少年、『ルシアン・エルヴァス』は剣を鞘に収めると、人形の残骸とともに再び梯子を少しばかり気落ちした様子で剣を収めた。
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