1、深夜の襲撃

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「しかし弱ったな、ここんとこ金欠だしなぁ……アルミ製はおろか木製の人形も買えないかもなあ……」 テンションの下がった声で無惨に転がった人形の残骸を掴んでゴミとして廃棄しながら呟いた。 ルシアンはこの町に訳あって一人で暮らしている。 どうやって生計をたているのかというと、アルバース郊外の工房で力仕事を手伝って生活費の足しにしたり、剣の腕は立つのでたまに依頼を受けて傭兵として護衛の任にあたったりしている。 また、近所の人との交流も上々であるため、野菜をただで譲って貰ったりもしているので特に生活に不自由はしていなかった。 この鍛錬はルシアンの中で日課になっており、小さい頃から欠かさず続けており、それが剣技の元にもなっている。 ただ毎朝このように鍛錬を繰り返し、自分を磨くごとに強くなり、しょっちゅう練習用の木製人間を壊すようになってからはそれなりの出費はあるのだ。 更に使っている剣も恒久に使えるわけではない。 だから最近のルシアンはどうも金欠になりがちだった。 「うーん、まぁ工房のおっさんに金の前借りを頼むしかないな……しかし先月も前借りしたんだったけ。今度は無理かもな」 そんな懸案を抱えながら、練習用の人形の片付け終わったルシアンは屋上から下に降りようした。 「そろそろ行けるかな……いや、まだかな。もっと強くならなきゃ奴は……」 ルシアンはなにやら呟くと朝日を横目に見ながら剣の柄をギュッと握りしめた。
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