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「さてと…朝飯でも食うかな」
ルシアンは下に降りて、机の上にあった袋の中からパンを取り出してトースターにいれた。
しばらくしてチンッ!という音とともにトーストが出来上がり、バターナイフでバターを塗っていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「ん?誰だ…こんな朝早くに…」
こんな朝早くにくる理由が思い当たるとすれば、隣に住んでいる腰の曲がった細身のおばあさんが野菜のおすすそわけにきたのか、それとも寝坊した新聞配達が来るくらいしか思い当たらない。
しかし、新聞はすでに朝、ポストに突っ込んであったから、新鮮な野菜を優しいお隣さんが持ってきてくれたんだろう。
ルシアンは取りあえず、トースターにバターを塗る作業を止めて玄関に向かった。
「はいは~い」
扉を開けたそこに立っていたのは、新鮮な野菜を持っているやせ細ったおばあさんではなかった。
その逆で厚い鎧を見に纏った、軍の比較的若い兵隊だった。
「…軍の兵士が何か俺にようか?」
ルシアンは明らかに声のトーンを1オクターブくらい下げて、不快とも感じられかねない言い方で兵士に訊いた。
兵士はその不快さを感じとったのか、少し次の言葉を躊躇っていた。
「いかにも、貴様がルシアン・エルヴァスだな?」
「そうだけど、何か?」
「おめでとう、お前を我がグローリー軍に招待する」
少年、ルシアンはおめでとうという祝福の言葉に少しばかりの憤りを感じた。
「おめでとう?招待……軍にか?」
「あぁ、コレを見ろ、国からのお前に対する招待状だ。」
兵士はそういうと、右手に持っていた便箋をルシアンに手渡した。
封を斬って中身を見ると、確かに白い紙に軍に招待する内容が事細かに書き記されていた。
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