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「要らない」
ルシアンはそう一言いうと便箋を突き返した。
「なにッ!?」
兵士もそのルシアンの冷めた態度に動揺したように見えた。
元々、軍に徴兵ではなく、招待されるわけだから断る事もできる。
しかし、グローリー軍に招待されて断った人間など今まで一人もいなかった。
なぜなら、軍の一人として名誉と栄冠を与えられるだけでなく、軍の招待を受けられた家のものは、国から義援金が出たり、周囲に住む人間達からも一目置かれ、自分だけでなく、家族にも利益がある。
時には、軍の招待を得るため、必死で鍛錬を繰り返しているものもいる。
無論、ルシアンの先程までの毎朝の鍛錬はこの軍に入る為ではないが…。
「貴様、コレを断るとは大金を溝に捨てるようなものだぞ?正気で言っているのか?」
「要らんものはいらん、だいたい軍なんぞに入っても、喜ぶ家族なんていない……だいたい……」
そこでルシアンは言葉を詰まらせた。
「俺を捨てた非情なこの国の為に従事する気はない…」
ルシアンは小さく、されど強い威圧感を持った口調でそう一言いうと、兵士を憎悪の眼で兵士を睨みつけた。
「……そうか」
兵士はその眼力に少し怯んだように、一歩後ずさりした。
「理由はわかっただろ?早く帰ってくれ、正直軍の犬になりさがったアンタを見るだけでムカつくんだ」
「……」
それでも兵士はしばらく黙っていて立ち去ろうとはしなかった。
そしておもむろに口を開いた。
「…いや、こうなることは実は前々から知らされていた」。
「知らされていた?」
ルシアンは意外そうに答えた。
「あぁ、貴様を誘えば必ず断るだろうから軍の駐屯地まで呼び出せ、という指令も受けている。」
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