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カツン。
何か硬いものがガラス窓にぶつかった。
けれど、それに背を向けて再び掃除を始めたメイサは気付かない。
カツン。
もう一度、窓に何かがぶつかる音。
けれど、今度もメイサは気付かない。
沈んだ気持ちが、周りの気配や音に疎くなってしまっているのだろう。
カチャ……
やっぱりメイサは気付かない。
黙々と仕事をこなすその背中に、――影が忍び寄ってくるのも知らずに。
抜き足差し足でメイサの背後ギリギリまで近寄った影は、込み上げる笑いを押し殺し、その肩を叩いた。
「メーイサッ!」
「……ッギャアアァァア!!」
影は全く予想しなかった。
いや、出来なかった。
メイサがとんでもなく驚いて、とんでもなく叫び声を上げるなんて。
――ずっとその手にあったモップの柄が、影に振り下ろされるなんて。
ガツンッ、と頭に勢いよく当たった瞬間、星が散った。ような気がした。
「いっでえぇぇっ!!
頭を押さえ悲鳴を上げる人物を見たメイサは、我に返ったように驚いた。
幽霊か、それとも泥棒かと思ってモップを向けた相手には、見覚えがあったのだから。
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