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「……ティト?」
恐る恐る声をかけるメイサ。
頭を押さえ呻いている影の正体は、メイサと同い年ほどの少年だった。
「く、うぅ……痛ぇ……。
本気で殴りやがって……」
「だ、大体あんたが驚かすからだろう!
本当にもうっ……びっくりした」
痛みでそんな余裕は無いだろうが、否定しないところ、本人であるのだろう。
なかなか手を頭から離さないのは、相当強く当てられたという事か。
流石にメイサも悪いと思ったのか、「悪かったよ」と俯き加減にポツリと言った。
「それにしても、あんたいつの間に入ってきたのさ? 全っ然気付かなかったよ」
「はあ!? 何度も窓に石ぶつけて合図したんだぜ?
普通気付くだろ!」
「そうだったのかい。
お生憎様、さっき“しりあす”な気分に浸ってたもんだから聞こえなかっ……て、ちょっと待ちな。
石をぶつけただって?」
突然声色を変えたメイサに、ティトは少しだけ後込んだ。
頭から手を離したところ、どうやら痛みは引いてきたようだ。
「ああ。流石に声を出したらマズいだろ?」
それがどうした、と続けて聞こうとした口は、メイサに胸倉を掴まれた事で阻止される。
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