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     賑やかな住宅街の広がるとある都市。 そこから少し離れた少々不気味な林を抜けた場所に、広い広い屋敷が建っていた。 どれだけ広いかと問えば、雇った使用人の部屋が全体の半分弱を占めるほど。 つまりは使用人の数も多いというワケだ。 皆が皆、それぞれ仕事をこなす為、廊下はひっきりなしに人が行き交う。 だから、静かな林とは対照的に住宅街に負けないくらい屋敷も賑やかなのである。 使用人の中で大半を占めるのは【掃除婦】だ。 つまり広い広い屋敷には、それだけの人数が必要だということ。 彼女たちが仕事を始めるのは、月が顔を覗かせる夜。 今宵も星月が見守る中で、屋敷中で騒ぎ出す―― * 「ああっ、いつか私の元にも王子様が現れないかしら!」 溜め息のように悲しげな、しかし大袈裟な一声が、他の掃除婦達にも同意の声を誘った。 「そうよ。私達は囚われた哀れなシンデレラ。外の世界と隔たれて、今日も雑巾がけをするの……」 月が昇る頃、屋敷の活気(騒ぎ)はこうして表れる。 賑やかしの中心は、いつも彼女達なのである。
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