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「あんた達!
口ばっかり動かしてないで掃除しな!」
そんな中、瞬間騒ぎを止めた者が一人、掃除婦達にモップを突き付けながら喚いた。
「やだっ、【メイサ】ったら~、モップを振り回さないでよ!
それにちゃんと手も動かしてるじゃない」
「その割には全然進んでないみたいだけど?
いい加減そのお子ちゃまな妄想すんのは止めにしな!
こっちはうるさくて掃除に集中出来ないんだから」
掃除婦と睨み合っている、
【メイサ】と呼ばれた健気なこの少女。
彼女は夢物語が大嫌いなのである。
理由は様々だが、掃除中いつも耳に入る妄想事に集中を阻害され、毎度うんざりしてきたのが一番だ。
「失礼ね。これは妄想じゃなくて乙女の夢なのよ。
そう言ってるあなただって十分お子ちゃまの年じゃない」
「叶いもしない夢なんかにうつつ抜かしているあんたよりは大人だと思うけどね」
持ち前の気の強さが突っ走るせいで、言い争いが始めるのも日常茶飯事。
厄介な事になかなか治まらないので、周りの使用人達は「また始まった」と溜め息をつき、または好奇の目で見守るのだった。
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