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けれど、そんな騒ぎを鎮める事のできる人物が一人だけいる。
「はいはい。お前たち、もう喧嘩は止めにしな!」
メイサと同じくモップを片手に二人の間へ分け入る。
途端、メイサは勿論他の使用人達に緊張が走った。
「あ……エドリーさん。
あの……」
「全く、メイサもアイリスもなんで大人しく掃除が出来ないかね~?
もう幼子じゃないんだから、仕事とそうでない時の区別をきちんとつけな!」
ピシリと言われ、二人は肩を竦ませながら小さく「はい」と答えた。
掃除婦の長を務めるエドリーには、誰も逆らえないので、他の使用人達から恐れられているのである。
こうして賑やかな夜は、一段落が着いたように落ち着きを取り戻して更けてゆく。
*
「……広すぎ」
太陽がまだ昇らない夜明け頃。
誰も居ない図書室で、メイサは途方に暮れたようにポツリと呟いた。
同世代の掃除婦達はまだ寝静まっている時間帯に、何故彼女が居るのかと言うと、昨夜の騒動が原因で、「乙女の夢」妄想を巡り言い争った相手であるアイリス共々「罰追加掃除」を言い渡されたからである。
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