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辺りを見回すと、ここは見慣れた納屋の中だった。
神尾家に居候していた時の、俺の寝床だ。
ということはここは神尾家の納屋の中であり、俺はまたここで寝ていたというわけなのだろう。
……頭の中で、同じ疑問が幾度も反復していた。
―――何故だ。
俺は観鈴と共に居るため、自らを捧げることを選んだ。
だから、俺はもうこの世界には存在しない。
そして、観鈴。
俺は観鈴の最期の時まで観鈴と共に居た。
俺も、観鈴も、もうこの世界にはいないはずなのだ。
なのに…どうして。
「……体、大丈夫なのか?どこも痛まないか?」
「うん、全然平気だよ。ぶい」
笑いながら、手でVサインを作って見せる。
「…そうか。よかった……」
「……でもね……」
顔を下げる観鈴。
「…どうした?」
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