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「風呂入ってくる…」
泉はカバンに近付き、着替えを探して置いてある浴衣を手に持ち、浴場の扉に向かった。
**********
しばらくして、浴衣を着込んだ泉が部屋に入ってきた。濡れた髪をタオルで拭きながら、木製の台の前に座り込んだ。
その前では目を丸くした晃司がいる。
「お前…まだ呑んでるのか?明日仕事だろ大丈夫なのか?」
泉はそんな晃司の様子に不思議そうに見つめた。
「えっ…あ、これでやめるよ…」
初めてみる泉の浴衣姿に視線を向けて、座って髪を拭いている姿を見ている。
「なんだよっ…虫でも付いてるか?」
じぃーっと見つめる視線に泉は、気付くと顔を振り向かせて、晃司に瞳を向けた。気になって浴衣をみたが何も付いていない。
「あ、温泉どうだったの?」
そんな様子を見ていた晃司は可笑しくて顔を大きな手を覆い隠した。笑いを堪えながら顔を上げると、話題を温泉の話に変えた。
「なんか…落ち着いて入れたなぁ…効能とかはわかんねぇけど…夜景が綺麗だったぜっ」
晃司の様子が気になる泉は疑いの表情を晃司に向けて、素直に思った感想を語った。
「そう、それは良かった…」
最後の一杯を一気に飲み干した晃司は、穏やかな顔で見つめていた。
「お前も入ってこいよっ…明日仕事なんだから…」
猪口を置いた様子を見て、泉は入るように勧めた。そして、置いてある小型冷蔵庫から炭酸飲料を取り出して、グラスに注いだ。
「じゃあ…俺のお願いきいてくれる?」
炭酸飲料を飲む泉を見ていた晃司は、ふと明日の撮影の事を考えていた。何かを思いついたのか、にこやかな笑顔を泉に向けた。
「なんだよ?またへんな事考えてないよな…」
その顔が何か企んでいるのはすぐに分かった。
泉は分からないままその願いをきいてみる事にした。
「せっかくの旅行なんだし…楽しもうよ…」
すると、晃司は身体を起こして、泉の方へ移動していき、自分に向けられた顔に手を伸ばして顎を押さえて持ち上げた。
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