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「終わった、喉乾いたでしょ…ハイッ」
渋谷の隣で足を止めた晃司は、ミネラルウォーターの入ったペットボトルを泉に渡そうと持ってきていた。
「サンキューっ」
泉は笑顔でソレを受け取り、キャップを開けて口に近付けて、ゴクゴクと飲み始めた。
「あっそうだ、今夜近くで花火大会があるらしいんだけど…見ない?」
そんな中で渋谷は夜にある花火大会に誘いに来たことを思い出した。東京ではあまり見れないので楽しみにしていた。
「花火大会?」
ペットボトルの中身を一気に飲み干した泉は、花火大会なんて行ったことがないので渋谷の話が気に止まって聞き返した。
「そこら中に貼り紙があったな…旅館からも見られるんだろ?」
晃司は場所がどこで行なわれるのか知っていた。
わざわざ見に行かなくても、宿泊してる旅館から見たほうが楽だと思った。
「何だ知ってたの?せっかく知らせに来たのに…」
自分が話そうとしていた事を先々に言われてしまった渋谷は、ムッとした顔で晃司を見た。
「お前は遅いんだよ、昨日来るときにが目に入ったんだ」
晃司は偉そうに背の低い渋谷を見下ろして、低い声で答えた。
「ヒドイっ!あんたが言うとなんかむかつくわねぇ…」
渋谷は晃司を見上げて、苛立つ気持ちで人差し指を向けて喚いた。
「渋谷、てめぇ…」
晃司も少し腹が立ってきて、嫌な空気が漂いだした。
「晃司、何やってんだよっ」
そこに泉が止めに入った。もちろん本気じゃないと分かってはいるが、気になってしまう。
「助かったわぁ…拓ちゃん!」
渋谷は、泉の腕に捕まり身を潜めると愚痴を零した。泉の前では晃司は大人しくする事を知っている。
「渋谷…泉から離れろっ」しかし、泉から離れない渋谷に苛立ちを覚える。
しかし、静かな口調で怒りを込めて文句をいう。
「なぁーに…妬いてるの?」
晃司の様子から嫉妬しているのが分かった。
渋谷は面白そうに思い、泉を引っ張ると走りだした。
「え、ちょ…何だよ?渋谷っ」
浜辺に走りだした泉は、訳が分からずに付いて走る。後ろを見ると、晃司がついてきている。
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