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  ハサミが壊れた。   長年愛用していた、仕事用のハサミが。     よりによって愛すべきわが息子を助けるために。               《再生。》     職場にふらふらと入る中3の息子。   おもむろに愛用のハサミを手にとる。   それを自分の胸へ。     ピッ 《スロー》     わ た し の 手 が む す こ の 細 い 腕 を と ら え     ピッ     抵 抗 す る 息 子 の も つ ハ サ ミ が           ピッ               私の胸が真っ赤になったのを息子は放心状態で見つめていた。 私は精一杯の笑顔で これはお昼食べたパスタのミートソースだよと言った。     かわいそうな息子。 泣き崩れてしまった。   私は泣かないでと頭をなるべく血でぬれてない方の手で撫で、野良猫のように外に出た。     今日は天気がいい。       ハサミは胸でそれは美しく輝いた。     壊しちゃって、ごめんね。     私は優しく、笑った。
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