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だからそんな子供たちは肉親と思いじいと呼んだ。
里の人々にとってじいは父でもあり、師匠でもある。
だが、灯凪もそう頻繁に会えるというわけではない。
灯凪もじいと顔を突き合わせたのは久方ぶりだった。
「なんだ、驚いた……じいか」
ほっとした表情で裾の乱れを直して座った灯凪は上座を譲り、下座に腰を下ろしていた。
「そんな気遣いは無用じゃよ、灯凪。
して、任のことは灼景に聞いたであろうな?まさかあやつ、伝えずに送り出しはしまいな」
ニヤリと笑い、じいは上座ではなく灯凪のすぐ傍に膝をつき合わせるのではないかというほど近くによっこらしょと腰を下ろす。
「まさか。灼景はちゃんと教えてくれたが……しかし、じい」
「んむ?」
「なんで私が奥侍女として入り込むような任を……」
「まあ、確かにお前向きではないわのう……。口の利き方も、立ち振る舞いもなってはおらん」
「うっさいな。……分かってるなら、なんで私を……」
「灯凪、お前がこの美濃と縁がある故……だ。
お前は、深くこの美濃に関係している娘じゃ」
「……は?いや、じい大丈夫か?
私が、なんで……」
しかし、一蹴しようとした灯凪にじいは笑いもせず、言う。
「任をもう一度言ってみてくれんか、灯凪」
「あ、ああ……。美濃姫の輿入れに伴い、侍女として警護する……だろう?」
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