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「……死ぬ?」
ポツリと洩らされた灼景の声に今まで下を向いていた灯凪は顔を上げてまじまじと灼景を見た。
普段、タブーとされ口にすることなど滅多に無いその単語に、灯凪は半ばその余韻をじっくり味わうように口にする。
「何で、私が死ぬ?ただ、美濃の姫様を護ればいいのだろう?死ぬほどの危険なんて、どこにも……」
「何かが、おかしい」
「え……」
灼景はただ何かを見つけるように何度も書をなぞって読む。口の中で消えていく言葉には、何かが隠されているように思う。
「嫌な、予感がするんだ……」
「ばか。余計に気にするじゃないか!」
気のせいだと笑い飛ばした……否、笑い飛ばしたい灯凪はもう一度軽く馬鹿、と言い灼景の頭を小突く。
反射的に呻いた灼景は灯凪の気持ちを悟り、薄く笑みを浮かべたが、それもすぐに引っ込んだ。
同じくらいに不安に思う気持ちがある。そして、それは明らかに灯凪の気持ちを汲んでやるよりも、大きい。
そして、それは抑えきれない。
「だって、お前一人だけなんておかしいじゃないか!いつも、……いつも一緒だったのに」
「今までが、おかしかったんだ。もっと……私たちは自立すべきだ。生きていくには、お前は甘すぎる」
「俺に、もっと……もっと、力があれば良いのに」
悔しげに拳を振り上げて木の根元を殴りつける灼景に、灯凪は冷たい声でもって諭す。
その顔は、最早普段の灯凪ではない。任務のときの灯凪だ。
「ごめん。……一緒に居られなくて」
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