1、始まりの文

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灯凪には初めての離別とも言える。  初めての離別は己を天涯孤独の身にした。  だけれどもそのときのことは語りに聞いただけだった。  だから本当の離別はこれが初めてだと言える。  灯凪はチクチクと何かが突き刺さるような胸の痛みにただ耐えた。  それを宥めるためにも胸に抱いた懐剣を抱き締める。  忍は、堪え忍ぶ者。  これしきのことで胸を痛めているようでは、駄目だ。  灯凪は、天を仰ぎ見た。走りながら探すが、そこには月の光は無かった。  向かうは、美濃。  そして尾張だ。  その先に何が待ち受けているのか灯凪に知るすべは無かった。
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