第二章

15/15
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ
〈ロケット〉はここに沈黙した。  わずか一〇分にも満たない悪夢だった。  セントラルパーク、地下、約一五メートル。  人工島のメガフロートは常にその底を海面に浸している。  しかし、潮の満ち引きによっては海面との間にわずかな隙間が出来ることがある。  その、押しつぶされそうな狭い空間を、少女は水しぶきをあげながら突き進んでいた。  エアバイにはふらつくほどたくさんのショルダーバックが引っかけられている。  彼女のほとんど透明な瞳には何が見えているのか、その思い詰めた表情からは何もうかがい知ることできない。  それでも彼女は明確に進路を取っていた。  しばらく進むと目の前は行き止まりで、コンクリートの壁が少女の飛ぶ空間に立ちふさがっていた。  だが、そこが目的の場所だったのか、彼女は機をホバリングさせ、一つのバックをコンクリートと鉄骨の間に押し込んだ。  少女は息つく暇もなく、次の目的地に向かってエアバイを進めた。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!