第三章

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れ飛びそうだ。  涼はけん制のため、真下に一発浴びせる。  それを軽々とかわし、ジュリアが距離を詰める。  ベレッタから延びたレーザーが見下ろす自分の眉間に当たっているのに気づき、涼はさらにアクセルを踏み込む。  Gが体に鉛のように覆い被さってくる。 「くっ…」  加速に耐えきれず純の機体がぶれはじめる。 「も、もうちょっとだけ昇るんだ…」  涼が食いしばった歯の間から言葉を出す。 「あいつが…追い抜くまで…」  スティックを握りしめる手は血が通っていないかのように感覚が鈍い。  顔も同じくらい蒼白だ。  ただ、視覚だけが濃い霧の中に顔を突っ込んだように暗くなる。  激しいGのため、頭から血が引き、ブラックアウト症を誘発しはじめたのだ。  ふと、先日の事故が頭をよぎる。  幸運はそんなに続かないかもしれない。  それでも、ブレーキペダルは動かさない。 (まだ…いけるさ…)  隣では純がうなずいていた。 (ここが…境界線…なんだね)  視界が閉じ、気が遠くなる。  五感を超越した領域に足を踏み入れようとしている。  そして次の瞬間――  二人はラインを超えた。  サドル下のコアが共鳴するかのように震え出す。 (パワーが…あふれてくる…!) (これが限界を超えるってコトなんだ…!)  ギュッとスティックを握りしめる二人。  だが、その間にジュリアが割って入り、限界をも超越した速度で悠々と抜き去った。  チキンクライムは相手より上昇力がないと成立しない。  そう言いたげな勢いで二人の上を行き、さらに加速するジュリアは、ハンドガンを下に向け、引き金に指をかけた。  しかし――  抜き去ったはずの二人の姿がそこにない。 「ヘアピンターン!」  その角度に巧と司は目を見張った。  垂直に昇っていたイダテンは、スティックをつかんだ利き腕と、つま先だけを辛うじて残し、体を大きく横に張り出し、重心移動で鋭角にターンを見せた。  ほとんどスピードを殺さずに、そしてさらに一段と加速を加え、上昇から下降へと移行する。  重力の滝に体とエアバイをあずけ、加速を続ける。  チキンクライムから一転してチキンダイブ。  しかし、ターゲットを引き離したのは一瞬だけだった。  ジュリアはターンした気配すら見せず、
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