第三章

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 うわずった声に、司は素直に従った。  純の胸元にハイビームが光の輪を作る。  口々に「どうしたの」といいながら、覗き込む三人。  視線が集まったその先には、まばゆく光るぶどう色のコアが一つ―― 「こっ、こっ、これってまさかっ!」  叫ぶなり、自分のエアバイに飛びつき、三人はユニットカバーを電光石火でこじ開ける。  そして止まる間もなくダッシュし、光線を浴びている純のコアに突き合わせた。  四つのコアがお互いにライトの光を四方八方に乱反射させている。  ゴクリと生唾を飲み込んでから、巧が口を開いた。 「ゆ、夢じゃないのよね…」 「ま、間違いないですわ…」 「この色にこの輝きって…」 「パープルコア…だよな…」  呆然としたまましばらく手の中のコアを見つめる二組のチーム。  徐々にクラスチェンジという言葉が現実味を帯びてくる。  そして、最後には声を揃えて叫んでいた。 「やった! Pクラスッ!!」  喜びにあふれた声が、セントラルパークに響き渡る。  闇に覆われたメガフロートの夜空に、四つのエアバイが歓喜の舞を見せるまでには、そう長い時間はかからなかった。  それから十数分の後、邦彦とマリアは受話器の向こうから飛び出す興奮した四重奏に多少距離を置きながらも耳を傾けていた。 「――うん、わかった。…いや、いいよ。…ほら、明日のCADO主催のドッグファイト大会、次の解析はあの後にするよ。…え? 天気が悪い?」  邦彦は窓から空を見上げた。  厚い雲に遮られ、月の姿は見られない。 「風も出てる見たいですわ」  マリアは揺れる街路樹に心配そうな顔を向けた。 「…ひどい雨さえ降らなきゃやるだろう。…今日はゆっくり体を休めて明日に備えるんだぞ。…あ、ちょっと待った、まだ切るな! クラスチェンジのことは誰にも言っちゃダメだぞ。…なんせ最近はコア狩りなんて物騒な事件が――ええっ! バトルしたってぇ!?」  邦彦は窓際にいたマリアを手招きした。  駆け寄り、反対側からマリアが受話器に耳を寄せる。 「…〈H&K〉もやられたのか。これで知られているメガフロートのPクラスは全滅だな。君たちのだけでも残ってよかったよ」  マリアの目が悲しみに曇る。  そして、受話器から漏れてきた言葉に、ハッと息をのんだ。 「…そうか、
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