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そうだけど?」
「ああ、やっぱりそうだったのね」
巧と司がうなずきあう。
「ついさっき、コロシアム裏の駐機場に降りていく琳さんとすれ違ったんです」
「目シパシパさせて大きなあくびしてたわよ」
それを聞いて純は涼と顔を見合わせた。
「てことはギャラリー席かな」
「見てるんならまあいいか」
涼はそう言って円形競技場の入り口に目をやった。
すると、ちょうど邦彦とマリアが矢島と共にこちらに歩いてくるところだった。
軽く手を挙げた矢島はCADOSSの制服をピシッと決めている。
邦彦とマリアは例のごとく白衣姿で、その目は巧と同じようにはれぼったく、そして思い詰めたような表情だった。
連れだって歩く三人を目ざとく見つけた巧と司は、首を後ろに向けたまま固まっている涼を押しのけ、両手をぶんぶん振って矢島たちを出迎える。
「矢島さん、予選、観ててくれました!?」
「もちろん!」
矢島が再び手を挙げて応えた。
「抑え目にしてたらしいけど、さすがはPクラスだな、動きが滑らかだよ」
純は不思議そうな顔を向ける。
「あれ? 隊長は何でそのこと知ってるの?」
矢島は邦彦にちらりと目をやった。
邦彦は涼のユニットの中を覗き込みながら答えた。
「矢島君は動きでわかったらしくて訊いてきたんだ。さすがはCADOSSの隊長と言ったところか――おっ、ホントにPクラスだ」
同じように覗き込むマリアと視線を交わす。
マリアは小さくかぶりを振っただけで、顔を上げた。
その表情は邦彦よりも冴えず、やつれているようにも見える。
「ほめたって何も出ませんよ」
苦笑いのまま矢島は涼と純に目をやった。
「…ついに先を越されちまったか。俺もおしいところまではいってるんだがな…」
涼が腕組みしてふんぞり返る。
「ま、ズバリ言って実戦経験の差でしょう」
「ちょ、ちょっと涼、失礼じゃないの…」
巧がひじで涼の脇腹を小突いてたしなめる。
「なーに、俺だってじきに君らに追いつくさ。幸い、榊博士が夢のようなモジュールを完成させたからな。CADOSSには明日あさってにも装備してくれるって言ってたんだ」
「彩子か…さっきちょっと顔見に行ったら、CADO中のボールに片っ端からそのモジュールつけてたぞ。アレ、許可取ってないんじゃないか?
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