第四章

6/60
前へ
/145ページ
次へ
ウイングスは、共に、トーナメントの端から一段一段しっかりとした歩みで登っていった。  それに従い、Pクラスの力を徐々に開放していく。  新しいクラスのコアをいきなり実戦に投入するのだ。  本来ならば完全に乗りこなすためには数日の猶予は欲しいところだ。  しかしそうも言っていられないので、運動性能やフォーメーションの確認などは慣らしを兼ねて実戦で一つ一つ試して行くしかない。  決勝で闘うまでは無茶は出来ない。  そのことを心に刻みつつ、バトルを重ね、トーナメントを勝ち進んでいく。  それに伴い、Pクラス本来の動きに近づけていく。  Rクラスの時とは比較にならないほど機体との一体感が強い。  もはやエアバイは手と足の延長となり、コアは、もう一つの心臓として機能していた。  三回戦が終わり、準決勝へと進む頃には、この二チームのクラスチェンジは出場した全てのゲーマーの知るところとなっていた。  すでに四人とも、完全に新しいクラスを乗りこなしていた。  もしかしたらコアの方が自分たちを乗りこなしたのかもしれない――  そんな考えが頭をよぎるほど、潜在能力が引き出されてきた。  ウオームアップは充分だ。  全ては決勝戦のために。  その時はすぐそこまで迫っていた。  フライングポイントに陣取った涼はマガジンに弾丸を込め、グロックに射し込む。  ハンドガンをホルスターにしまい、エアバイのコアユニットを起動させる。  そう、いつものように。  胸の高鳴りも、ギャラリーの歓声も、同じだ。  ただ違うのはこの試合が決勝戦で、相手がウイングスということだ。  思えば、お互い大きな大会では決勝に上がったことはなかった。 (…最高の舞台じゃないか)  後ろに付いているパートナーの純も、向かいのフライングポイントの二人もきっと同じ事を考えていると思った。  後は試合開始のアナウンスを待つだけだ。  コアは充分に暖まっている。  頭の中が空っぽになる。  激しい鼓動も心地よく耳に届く。  時折インカムから伝わる純の息づかいに笑みがこぼれる。  体がうずいているのだ。  早く飛び出したい。  空が待っている。  たとえ曇っていようとも、空はいつもと変わらずそこにあった。  緊張感が臨界にまで高まる。  
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加