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そして、決勝戦の開始を告げるカウントダウンが千人近いギャラリーの見守る競技場に響き渡った。
《…5、4、3、2、1――GAME START!》
スティックとペダルに血が通う。
涼はエアバイを跳ね上げた。
純も同じく垂直に飛び上がる。
イダテンは前後に、ウイングスは左右に並んでそれぞれ宙に舞った。
距離をとったまま、四機のエアバイが空に駆け上っていく。
自らが上昇気流となって低く垂れ込めた雲に向かって昇る。
十数秒で高度四〇〇まで機を引っ張る。
上空の風は思ったほど強くない。
これなら心おきなくいける。
もう、様子見はおしまいだ。
涼は素早くグロックを抜き、初弾をマガジンからチェンバーに送り込む。
「純、そろそろ行くぞ」
「ウイングスの…出方待たないの?」
マイク越しに純がCZ75をスライドさせた間が伝わってきた。
「ああ…だってそんなことはさせてもらえそうにないぜ?」
そう言って涼はレーザーサイトをウイングスの方に向けた。
ダットを避けるように二機のエアバイが並んだまま身をひねり、こっちに突進してくる。
「散開していくぞ」
フォワードを務める涼の合図で、イダテンは上下に散った。
並ぶウイングスを挟み込もうという作戦だ。
涼は緩いらせんを描くように上昇し、上をとった。
程良い角度をつけ、翻ってウイングスとのクロスポイントに向かって降下する。
サイトを合わせ、慎重に引き金を絞った。
挟まれた恰好のウイングスだが、まったく気にも留めない様子でアクセルを全開にし、機体を思いっきり加速させている。
大気の粒子が流線型のエアロに沿って滑らかに後方に流れていく。
風を切り裂いているという感覚はほとんどない。
「くーっ、コレよコレ。やっぱりあたしのセッティングはPクラスにも完璧にマッチしてる!」
「巧、浸るのはそのくらいにしてそろそろ行きますわ」
「OK、このスピードなら楽勝よ」
そう言って、巧は司のエアバイと限界まで接近させた。
呼吸を合わせ、パラレルのまま小刻みに進む方向を変える。
上から涼、下から純、その間をウイングスが高速で駆け抜ける。
「ちっ…速い!」
舌打ちし、続けざまに五発叩き込む。
純の弾丸とクロスするが、ターゲットにヒットはなかった。
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