第四章

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「逃がすもんですか!」  司は反射的に機をひねり、急速離脱を開始しつつあるイダテンに再び照準を合わせる。  しかし―― 「待って、残弾がほとんどないわよ!」 「!!」  トリガーボタンを押しかけた司の指が一瞬固まる。  その隙をついて、イダテンは命からがら空に駆け上っていった。  ふーっと、細く息をつき、司がスティックを握りしめていた手を緩めた。 「すいません、あと残り二発ですわ…」 「こっちも三発。今ので決められなかったのはちと痛いかもね…」  巧は変形デルタロールを駆使しても仕留められなかったことを冷静に見つめていた。 (ここで追い打ちをかけても仕方ない。まだチャンスはある。そのときに必ず決める!)  二人は体勢を立て直し、先に上昇して間合いを取ったイダテンの攻撃に備えた。  巧と司はライフゲージが残り一ポイント。  もう後がない。  だが条件はイダテンもまったく同じで、彼らもしっかりと四発ずつ弾を喰らっていた。  そのイダテンは大きな弧を描きながら方向を変え、前後に連なったまま、ウイングスの左上方から下降に移っていた。 (あと三発か…)  涼は熱くなった銃からマガジンを抜き、残弾を確認したあと、再び装填した。 「一晩で一ひねり入れるとはねぇ。竜の牙か…ちょっと危なかったな…」 「だからって蹴っ飛ばさなくってもさぁ…」  純は涼の背中に憮然とした表情を投げた。  こちらも弾数の確認をしたところ、二発しか残ってはいなかった。 「ま、結果オーライってことで勘弁してくれっ!」  振り向いてそう言ってから、涼はグイッとアクセルペダルを踏みしめた。  間髪入れず、純も続く。  斜めに切り込んだ角度を徐々に急にしていく。  風を切り裂き、アクセル全開での動力降下。  やっぱり止まっているよりかっ飛ばしていた方が性に合っている。  向こうからはウイングスが再び手のひらを合わせて突っ込んできている。  今度も縦か、それとも横に分かれるのか。  迷うより、自分の反応に賭ける。  ただ、見せつけられるのではつまらない。  こちらも大技で迎え撃つ。  二人はすでにその準備に入ろうとしていた。 「ボクらって律儀だよね」  純が涼の真下に機を沈ませる。 「そうそう、改造技には新技で返すんだからな、
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