第四章

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お釣りが返って来るぜ」  だがその体勢は一瞬で、次の瞬間には涼が機をひねり、背面飛行を開始した。  直後、今度は純が、再び機体の向きを通常に戻した涼の上に背面飛行でつく。  互いに入れ替わりながら、反時計回りに回転を繰り返し、一直線に降下していく。  その奇妙な動きに、巧は一時心を奪われた。 「こ、これは…まさか…」  糸を引くように軌跡を絡ませ、駆け下りてくる二本のらせん―― 「ツインスパイラル!? いつの間にマスターしてたの!?」  自分たちのドラゴンファングと同等か、それ以上の難易度を持っているのは確実だった。 「しかも回転がものすごく速いですわ!」  司もこれまでの戦歴の中でも最高レベルのスパイラルに思わず声を荒らげていた。  イダテンは絶妙のスティックコントロールとペダリングで、ほとんど機体と体をこすり合わせるようなほど狭い距離を保ち、回転を続けている。  それに従い、ターゲットへと向けられた二本の銃身が、ガトリング砲のような動きを見せる。  巧と司は、二人にかわるがわる当たるダットの気配をひしひしと感じ、こちらもさらにアクセルを踏み込んだ。  少し風が強くなったようだ。  機体が風にあおられる。  だが四人とも微妙なバランスを保ちながら降下し、また上昇している。  アタックポイントに視線が集まる。  互いの距離が三〇メートルを切った。 「司、ここで決めるわよ!」 「二発とも当ててて見せますわ!」  一人に一発ずつなどとは考えない。  二発を速射させて片を付ける。  司はイダテンの回転を読み、純のみに照準を絞る。  通信は通じていないが、考えることは同じで、純も司に、涼は巧に狙いを定めていた。 「純、よーく狙ってから撃てよ!」 「ちょっと目が回ってきたけど、何とかいけそうだよ!」  イダテンがトリガーを絞り込む。  その瞬間―― 「散ッ!」  機体にひねりを加えたウイングスは、秒読みなしで合わせていた手のひらを離した。 「縦っ! また竜の牙だっ!」  その隙間に割り込むように、イダテンの二重らせんがクロスポイントを射抜く。  そしてウイングスのローリングに合わせるようにらせん軌道をカーブさせる。 「内側ですって!?」  司が目を見張る。  イダテンはスパイラルのまま自分たちよりも回転半
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