そら

第四章

径を抑えてローリングしている。
　銃口がこちらを向いているのが見える。
　同一平面上に進行方向を揃えれば、ハンドガン手持ちの彼らは容易に狙いを付けることができるが、固定式の自分たちは射角がとれない。
「フルブレーキッ！！」
　叫ぶと同時に、巧がフロントを跳ね上げ、イダテンをやり過ごした。
　同じく、慣性を殺し、機を立て直した司は純の背中にサイトを合わせ、引き金を絞る。
　しかし――
「散っ！」
　二重らせんがほどける。
　同時に、純はヘアピンターンで司の下へと向かい、涼は得意のツイスタームーヴで巧の上に舞い上がる。
　再びアクセルを踏み込み、ウイングスの二人がターゲットにサイトを向ける。
　イダテンも銃を握った腕を伸ばし、狙いを付ける。
　そして、四つの銃口が同時に火を噴いた。
　涼と巧は銃声がまだ響いてる段階ですでに次なる行動へと開始していた。
（はずした…！）
　三発の残弾のうち、二発を掃射した時点でお互いにノーヒット。
　垂直急上昇で互いの銃口から逃れる。
　一方、純と巧は互いにＶ字に切り込みながら引き金を絞りきった。
（かわせない…！）
　相打ちを予期し、残った二発を全て叩き込んだ。
　相手への手応えと自分への着弾を感じつつ、高速ですれちがう。
　その瞬間、二人の目にはお互いの瞳が映っていた。
　円形競技場の電光掲示板に、純と司のＧＡＭＥ　ＯＶＥＲを知らせる表示が点灯する。
　しかし、ギャラリーからは歓声一つあがらなかった。
　戦線を離脱しなければならない純と司も、機を揃え、降下せずに上昇を始めていた。
　まだバトルは終わってはいない。
　涼と巧が激しく火花を散らしながら持てる限りの技術を駆使して、残った弾丸を確実にヒットできる位置に着こうと機体を振り回しているのだ。
　両者とも、残弾は一発。
　どちらかが先にヒットさせれば雌雄は決する。
　そして、外すこともまた同義だった。
　一発の重みが、引き金にかかる指を奮えさせる。
　だが不思議と焦りはない。
　好機が訪れれば必ず撃てる。
　その確信を持ってスティックを操り、機を駆る。　
　自然と二人の形はチキンクライムへと移行していった。
　互いにエアバイの腹を見せつつ平行に上昇する。
　それを見守ろうと、純と司も昇ってくる。