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すやすやと眠る彼女を僕はただ見つめていた。
近藤がトシを呼んでくれ、そう頼まれたのが今から20分くらい前の出来事。
伊東は屯所内を捜していた。
いつもの鍛練場や副長室にも居なかった。
普段はもっと簡単に見つかるはずなのにな、
と思っていると、縁側であの長い黒髪を見つけた。
近寄ってみると、座り込んでいるようだ。
「…………寝てる……。」
規則的な呼吸が聞こえる。
眼を閉じ、柔らかい表情を浮かべて寝ている。
いつもとは想像できない状態だ。
取り敢えず、起こそうと思って擦ってみたが、反応なし。
声を掛ければよいものを自分にその気はない。
ずっとこのままでいたいと心の何処かで思っているから。
「…取り敢えず、運ぶか…。」
彼女の傍によると、伊東はひょい、といとも簡単に持ち上げた。
俗に言うお姫様抱っこだ。
それでも彼女はよく眠っているのか、起きようとしない。
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